続々と選手がゴールラインをきってあたりに人が溢れだした。
さすが全日本というべきか、右にも左にもスター選手ばかり。
引き続きゴールしてくる選手の進路を気にしながら右往左往しつつ、気になる選手へカメラを向けていった。
すぐに、この時撮りたかった選手が見あたらない事に気がつき、かなり焦った。
どうしても撮りたくて、ようやく見つけ出したのはシマノレーシング 鈴木真理選手。
レース状況を見て他の選手が見いだせない最良の手段を瞬時にはじきだし勝負をしかけていくことから、天才という表現が用いられる事が多い選手だ。
早々チームテントへ向かっていた、その天才の背中にはこれまでと何か違う雰囲気を感じた…
はじめて自転車レースを見にいった日に真理さんの走りをみた。
ものすごく楽しそうに走る姿は今でもはっきり思い出せる。
そして、この時の走る姿に魅せられ自転車レースを追いかけるようになった。
この年は多くの会場へ足を運んだものの、真理さんは身体の故障で成績がふるわなかった。
着順はどうでもよかった、はじめて見た時のあの走りをもう一度見たかった。
そして当時所属していたチームミヤタ解散のニュース。
メンタル部分でも影響が大きかったのかもしれない。
その後も、毎回もう一度見られると信じて会場へ足を運んだ。
そしてシーズン後半、そのもう一度はやってきた。
レース終盤、真理さんの腰がサドルから上がった。
幅広の肩が前にせり出し、ぐんぐんスピードがあがっていった。
まだ距離があるうちから、見たかったのはコレだという確信があった。
この時、興奮して手元が震えたのを必死に抑えた記憶がある。
どうしても捉えたったのは間違いないが、その焦りよりも、
見たかったものがようやく目の前に現れた興奮からの震えだった。
ファインダー越しに見た真理さんはあの日と同じように楽しそうだった。
そして、今年の全日本でもそれが見られたのかもしれない。
終盤、積極的にアタックをかけていたと聞く。
それを思うと自分の位置取りは失敗だったかもしれない。
今回はチャンピオン確定の瞬間を捉えたかったわけではないが、ゴールで撮りたかった。
そのゴールを捨ててコース上に残るのも正解だったかとも思う。
ただ、この背中を見て次への期待を膨らませられた事を思うと、今回は正解だったと考えてもわるくない。
袖口に付く日の丸は全日本チャンピオン獲得者の証。
この時感じたこれまでと違う雰囲気は、またもう一度を期待してまう何かがあったのは間違いない。
リザルト
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